はじめに
日本の建設業界は現在、深刻な人手不足や高齢化、そして労働災害のリスク増加といった多くの課題に直面しています。これらの問題を解決し、業界の生産性と安全性を向上させるために、ロボット技術の導入が急速に進んでいます。私自身、経営の苦しい経験から生き残ってきた一人として、ロボット技術の活用がもたらす可能性を強く感じています。本記事では、国土交通省の最新施策や大手ゼネコンの先進事例を交えながら、建設現場でのロボット技術活用の最前線を詳しく解説します。
建設業界を取り巻く現状と課題
人手不足と高齢化の深刻化
建設業界では、就業者の高齢化が進み、若年層の参入が減少しています。これは、3K(きつい、汚い、危険)の職場イメージや、長時間労働が要因とされています。このままでは、将来的な労働力の確保が困難になり、業界全体の生産性が低下する恐れがあります。
労働災害のリスク
高所作業や重機の操作など、危険を伴う作業が多い建設現場では、労働災害のリスクが常に存在します。これにより、企業は安全性の確保と作業効率の両立という難題に直面しています。
国土交通省が推進するi-Construction
i-Constructionの概要
国土交通省は、建設現場の生産性向上と働き方改革を目指し、2016年から「i-Construction」という取り組みを推進しています。 今後、更なる人口減少が予測されるなか、国民生活や経済活動の基盤となるインフラの整備・維持管理を、将来にわたって持続的に実施していくことが必要であることから、これまでの取組をさらに一歩進め、「i-Construction 2.0」を推進することが発表されました。
i-Construction 2.0では、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上することを目指し、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱として、建設現場で働く一人ひとりが生み出す価値を向上し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指して、建設現場のオートメーション化に取り組みます。
報道発表資料:「i-Construction 2.0」を策定しました<br>~建設現場のオートメーション化による生産性向上(省人化)~ – 国土交通省
i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~ 令和6年4月 国土交通省
ロボット技術の位置づけ
ロボット技術は、i-Constructionの中核を担う存在です。具体的には、建設機械の自動化、ドローンによる測量・点検、AIを用いた施工計画の最適化などが含まれます。これらの技術は、生産性と安全性の両面で革新的な効果をもたらします。
大手ゼネコンの最新事例
1. 大成建設:AI搭載の自律制御建機
大成建設は、AIを活用した自律制御型の建設機械の開発を進めています。この技術は、無人化施工システムとして、建設現場の生産性向上を目的としています。以下に具体的な事例を紹介します。
AI搭載の自律制御建機
- 無人化施工システムの開発:
- 大成建設は、GPSや各種センサーを用いて自律制御型重機の位置確認や動作を制御するシステムを開発しています。このシステムは、AIを活用して高精度かつ安全に施工が行えるように設計されています。
- 走行制御システム:
- 自律制御型振動ローラに搭載された走行制御システムでは、AIによって走行ラインの誤差範囲を平均20cm以下に低減することを目標としています。これにより、施工時間の短縮と作業効率の向上が可能となります。
- 人検知システム:
- AIを活用した人検知システムにより、カメラ画像から重機進行方向に侵入する可能性がある人を判断し、自動で重機を停止させる機能が開発されています。これにより、安全性の向上と省人化が実現されています。
- 協調運転システム「T-iCraft」:
- 大成建設は、自動運転建機の協調運転を制御する「T-iCraft」というシステムも開発しています。このシステムは、最大32台の建機を協調運転させることができ、自動運転と有人運転の両方に対応可能です4。
導入の効果
- 人手不足の解消:機械の自動化により、必要な作業員数を削減。
- 作業効率の向上:24時間稼働が可能になり、工期の短縮を実現。
- 安全性の確保:人間が危険な作業環境に立ち入る必要がなくなる。
2. 清水建設:高所作業の自動化
清水建設は、高所作業の自動化に向けた取り組みとして、特に危険が伴う場所での点検作業に球体ドローン「ELIOS 3」を導入しています。このドローンは、以下のような役割を果たしています。
ELIOS 3の具体的な役割
- 高所および危険箇所での点検:
- ELIOS 3は、高所や地下ピットなど、酸素欠乏症の危険がある場所や足場を使用しないと点検できない高所での作業を安全に行うために使用されます。これにより、従来は人が直接行っていた危険な作業を代替し、安全性を確保しています。
- 屋内での安定した飛行:
- このドローンは、GNSSやコンパスが利用できない屋内環境でも安定して飛行できるよう設計されています。これにより、通常のドローンでは難しい屋内での詳細な点検が可能となります。
- 作業効率の向上とコスト削減:
- ドローンによる自動化された点検作業は、作業効率を大幅に向上させるとともに、人件費や時間の削減にも寄与しています。これにより、全体的なコスト削減が実現されています。
清水建設のこの取り組みは、高所作業の安全性を高めるだけでなく、建設現場全体の生産性向上にも貢献しています。特に、2024年問題として知られる労働時間上限規制への対応としても、こうした技術革新は重要な役割を果たしています。
導入の効果
- 作業員の安全確保:高所での人間の作業をロボットが代替。
- 品質の向上:機械による精密な作業で、品質のばらつきを解消。
- 工期短縮:作業速度の向上により、プロジェクト全体の期間を短縮。
3. 竹中工務店:ドローンとAIによる外壁検査
竹中工務店は、ドローンとAIを活用した外壁検査システム「スマートタイルセイバー®」を開発し、高層建物の外壁調査に実用化しています。このシステムは、以下のような具体的な役割を果たしています。
具体的な役割
- 赤外線画像による外壁調査:
- ドローンを使用して高層建物の外壁を赤外線カメラで撮影します。これにより、人が直接高所で作業する必要がなくなり、安全性が向上します。
- AIによる自動判定:
- 取得した赤外線画像から、AIが建物の外壁タイルの浮きを自動で判定します。これにより、従来の人手による打診調査に比べて、精度が向上し、省人化が実現されます。
- コスト削減と効率化:
- 仮設足場を設置する必要がなくなるため、調査コストを削減できます。また、調査期間も短縮されるため、全体的な効率が向上します。
- データの可視化と分析:
- AIによって判定されたタイルの浮き状況は、熱分布データとして抽出されます。これにより、どの箇所に問題があるかを一目で確認でき、高精度な修復計画が立てられます。
竹中工務店は、このシステムを用いて安全で低コストな外壁検査を実現し、建物の長寿命化や持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献しています。
導入の効果
- 点検作業の効率化:人間では困難な高所や狭所の検査を容易に実施。
- 精度の向上:AIによるデータ分析で、微細な異常も高精度に検出。
- コスト削減:点検にかかる時間と人件費を大幅に削減。
ロボット技術導入のメリット
生産性の向上
自動化された機械やロボットにより、作業速度が飛躍的に向上します。これは、工期の短縮とプロジェクトの早期完成に直結します。
安全性の確保
危険な作業をロボットが代替することで、労働災害のリスクが大幅に低減します。これは、企業の社会的責任の観点からも重要です。
品質の改善
AIによる高精度な作業により、品質の安定化と向上が実現します。これにより、顧客満足度の向上とリピート受注が期待できます。
コストの削減
長期的には、人件費の削減や工期短縮によるコスト削減が可能です。また、品質不良による手直しコストも減少します。
ロボット技術導入に向けたアドバイス
1. 現状分析
自社の業務プロセスを徹底的に分析し、ロボット技術が最も効果を発揮する領域を特定しましょう。これは、限られたリソースを最適に配分するために不可欠です。
2. 段階的導入
一度にすべてを変えるのではなく、小規模なパイロットプロジェクトから始めることをお勧めします。これにより、技術の適用性や効果を事前に評価できます。
3. 人材育成
ロボット技術を扱える人材の育成は不可欠です。計画的な教育投資を行い、従業員のスキルアップを図りましょう。
4. パートナーシップの構築
技術企業やスタートアップとの連携も検討しましょう。外部の知見を取り入れることで、より効果的な導入が可能になります。
5. 経営層のコミットメント
経営層が積極的に関与し、明確なビジョンと戦略を示すことで、組織全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進できます。
生き残り戦略からのメッセージ
クライアントのA社様は、会社の資金が厳しい時期にロボット技術の導入に踏み切り、初期投資や従業員の反発など、さまざまな困難がありましたが、その後人員の確保が難しい状況が来た中でも、同じ銃教員数で、売り上げを増やし、施工効率の改善を図りました。苦難を乗り越えた先には大きな成果が待っていました。
- 生産性が飛躍的に向上し、受注案件が増加。
- 労働環境が改善され、離職率が低下。
- 企業イメージの向上により、新たなビジネスチャンスが創出。
行動を起こすことの重要性を痛感しました。迷っている方は、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
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